黒地に金色の線で描かれた、天秤の片側に吹き出し、もう片側に外へ伸びる道と扉が載り、わずかに傾いている様子を表した抽象イラスト

米国の大学の研究者が行った無作為化フィールド実験では、GoogleのAIモードを使うよう割り当てられた利用者は、外部サイトへのクリックが大きく減っただけでなく、検索への信頼や満足度も下がっており、「AIが答えてくれる検索」が必ずしも利用者にとって良い体験になるとは限らないことが示された。

AIモードの影響を調べた実験とは

この研究は、米ペンシルベニア大学とノースイースタン大学の研究者によるもので、2026年8月に論文として公開され、9月にはSearch Engine JournalやSearch Engine Landなど海外のSEO専門メディアでも取り上げられた。米国でChromeとGoogle検索を普段使いしている約1,100人を対象に、ブラウザ拡張機能を使って、7日間にわたり実際の検索行動を記録している。

参加者は、AI機能を取り除いた検索、普段どおりの検索、AIモードを強制的に使う検索の3つのグループに無作為に分けられた。アンケートの回答だけでなく、実際のクリックや検索回数を比較している点が、この研究の特徴だ。

AIモードで何が変わったのか

報道によると、AIモードのグループでは、検索から外部サイトへのクリックにつながった割合が、普段どおりの検索と比べて18.8ポイント低下した。1回あたりの検索時間はやや長くなった一方、1日あたりの検索回数は約0.92回減り、ニュースサイトやReddit、Wikipediaへのクリックも減少したという。

注目されるのは、利用者自身の受け止め方だ。AIモードのグループでは、検索への信頼、満足度、役に立つという感覚、自分で情報を選んでいるという感覚が、いずれも低下した。さらに、BingやDuckDuckGoなど他の検索エンジンを使う人の割合も11.2ポイント上昇している。反対に、AI機能を取り除いたグループでは、外部サイトへのクリックが8.8ポイント増えた一方、利用者の評価には目立った変化が見られなかった。

この結果をどう受け止めるべきか

もちろん、この結果だけでAI検索の価値を否定することはできない。対象は米国の利用者に限られ、期間も1週間と短い。AIモードを「強制的に」使ってもらう条件は、自分から選んで使う場合とは心理的にも異なるだろう。実験の途中でGoogle側の画面仕様が変わり、AI Overviewsを非表示にする処理が十分に機能しなくなったという技術的な制約も、研究者自身が報告している。

それでも、「AIが答えをまとめれば、利用者はより満足する」という前提が自明ではないことを、実際の行動データで示した意義は大きい。利用者は、答えそのものだけでなく、複数の情報源を自分で見比べ、納得して選ぶという過程にも価値を感じている可能性がある。

サイト運営者にとっての意味とは

AI検索の広がりは、サイトへの訪問を減らす方向に働く一方で、「自分で確かめたい」という利用者の欲求までは消していないようにも見える。AIの要約を読んだうえで、それでも訪れたくなるサイトかどうか。信頼できる一次情報や、その会社ならではの視点を持つことの重要性は、AI検索の時代にむしろ増していると考えられる。

まとめ

AIモードをめぐる今回の実験は、検索の便利さと、利用者の信頼や納得感が必ずしも一致しないことを示した。AI検索の形は今後も変わり続けるが、最終的に選ばれるのは、利用者が「確かめに行く価値がある」と感じられる情報だという点は、これからも変わらないだろう。