速く進む個々の線と、つながりきらずに滞るチームの線の対比を描いた、黒と金の抽象的な線画イラスト

中小企業の生成AI活用は、個人の作業を速くする段階には届いた一方で、チーム全体の仕事の進み方を変える段階にはまだ届いていない——2026年10月に公表された調査は、そんな「個人とチームの差」を浮かび上がらせました。

調査は、AI関連サービスを手がけるTANKA Japanが2026年10月22日に公表した「中小企業の生成AI業務活用実態調査」です。従業員100人未満の国内企業で生成AIを業務に使っている会社員500人が回答しました。生成AIで「自分の作業が速くなった」と答えた人は64.2%だった一方、「チームの仕事が速くなった」は51.8%にとどまり、60.0%が「自分は速くなったが、チーム全体はあまり変わらない」と感じていると報告されています。

なぜ「自分は速くなったのに、チームは変わらない」のか

調査で仕事が止まったり遅れたりする原因として多く挙がったのは、「他の人の返信・確認・承認待ち」(28.2%)や「情報や過去の経緯を探すこと」(23.6%)でした。こうした人と人のあいだで生じる原因は合計71.0%にのぼり、自分自身の作業に起因するもの(21.4%)を大きく上回っています。

文章の下書きや資料づくりのように一人で完結する作業は、生成AIが得意とする領域です。しかし、仕事全体の流れを左右しているのが「誰かの確認待ち」や「どこにあるか分からない情報探し」だとすれば、個人の作業がどれだけ速くなっても、チームとしての進み方は大きくは変わりません。速くなった部分と、詰まっている部分がずれている、という構図です。

「人と人のあいだの仕事」はなぜAIで減りにくいのか

同じ調査では、44.0%が同僚への確認や背景の説明、情報探しに1日1時間以上を費やしていると回答しました。また、AIで作った資料や情報を仕組みとしてチームで共有できていると答えたのは24.0%にとどまり、使っているAIツールがチームの事情を「あまり知らない」「ほとんど知らない」とした人は39.2%でした。

多くの生成AIは、利用者がその場で入力した内容をもとに答えます。チームの過去の経緯や、誰が何を担当しているかといった文脈は、言葉にされて共有されていなければ、AIにも伝わりようがありません。AIが「個人の道具」にとどまっている背景には、ツールの性能よりも、チームの知識がどこに・どんな形で置かれているかという問題があると考えられます。

「あの人がいないと止まる」状態は何を示しているのか

58.6%が「特定の人が不在・退職すると止まる仕事がある」と答えています。少人数の会社ほど経験や判断が特定の人に集まりやすいのは自然なことですが、それは同時に、知識が個人の頭の中にとどまり、共有されていないことの表れでもあります。

一方で、AIに最も期待することとして「確認・引き継ぎ・情報探しなど人と人のあいだの仕事」を選んだ人は42.0%で、「資料作成など自分の作業を速くすること」(41.2%)をわずかに上回りました。チームの経緯や役割を理解したAIを使ってみたいという回答も76.2%にのぼります。現場の関心が「自分の作業」から「チームの流れ」へ移りつつあることがうかがえます。

まとめ:AI活用の次の論点は「共有」

今回の数値はAI関連サービスを提供する企業による調査であり、参照した報道では調査期間や手法の詳細が示されていない点には留意が必要です。それでも、「個人の作業は速くなったが、チームの流れは変わらない」という指摘には、多くの中小企業にとって思い当たる部分があるのではないでしょうか。

生成AIを使うかどうかの段階を過ぎた今、問われているのは、社内の知識や経緯を言葉にし、チームで共有できる形にしておけるかどうかです。これは社内だけの話ではありません。自社の強みや考え方が言葉として整理されていることは、ホームページを通じて社外へ伝える情報の質にも、そのままつながっていきます。